ネタバレろぐ
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No.166

#Zodiac_School
シナリオをふまえての過去話をごりごり詰めたら1万字超えてたやつ。

シェアハウスに住み始めてから、ともすれば記憶がよみがえってから。うしは果たして立ち直れているのだろうか。考えてみると、やっぱり根本は過去に囚われたままだよなと思う。

 確かに11人の優しい同居人はいるし、記憶を無くしていた1カ月の間は模範的な生徒として平和に暮らせていた。でも、結局人殺しっていう過去は何も変わっていないわけだし、平和に生きていられたのは保護されている環境だったからでもありうるだろう。今現在、簡単に食費や生活費を稼げている訳ではあるまい。12人で歩み始めてすぐの内は竜君の黒詐欺稼業に任せる他なかったかもしれないし、なんなら現在のうしは狂気の影響もありごく潰しに近い状態かもしれない。ハウスキーパーや家屋修繕要員といえば聞こえはいいけれど……結局働けないだけだよね。という。うし自身、それに結構負い目を感じていそう。
 早く何とかしなきゃ、なんとかしなきゃ、どうにかしなきゃと焦って、多分色々と手を出そうとしていると思うんだけど、裏目ってドチャドチャになってることもありそう。


 そもそもなんで不定の狂気に陥ってるんだ、という所から詰めていく。
 うしの陥っている不定の狂気は、過去、とくに暗殺業に関連する記憶の影響で発生しているものだと思われる。不定の確定したタイミングが、地下にあった『子供たちはみな暗殺者見習いである』という書類をみむけた時と、2階にあった機械で自身の過去を思い出した時だったから。
 暗殺者であるという事は確かに好ましい状態ではなかったが、事実である以上、それも自身のアイデンティティの一部に組み込んでいただろう。それを唐突に「真人間として自由に生きていいよ」と言われて、どうしていいのかわからなくなって混乱が生じている。その結果が今の不定の狂気なのではないか。
 暗殺者として何人もの命を奪ってきたのに、自分は二者択一の世界を蹴破って、定められた運命を引きちぎって自由に生きている。どうして? その辻褄がうまく合わせられない。納得のいく理由が見つけられていない。どうして自分が罰せられずに生きているのか理解できない。到底現実とは思えない。現実とは思えないから、上手く情報が処理できない。という感じ。

 たとえば11人の仲間たちは罪を許してくれるだろう。話さなきゃ誰にもバレないし、今が大事だと励ましてくれるだろう。しかし、それで罪が無に帰す事は勿論ないし、自分が生きるために踏みにじってきた者たちに手足を絡め取られそうになる。今、自分が五体満足な人間として生きている事が不可解に感じる。これらの罪悪感や未消化の思考が、時折緊張性の四肢の麻痺として出てくるのだろう。

 健忘症、赤色に関連する事象が判らなくなる件については、正直、直近で焼肉に行く事が決まっていたから、焼肉の時に良い感じの不定ロールができたらいいなという下心で設定を付けた所も多大にある……。赤の欠落する色盲の要素を持っていると、肉の焼け具合が判らなくて一人で焼肉に行けないときいたから、それをやろうとしてた。此方も真面目に考えるなら、学園で過ごしていた時の自分の記憶と暗殺者の時の自分の記憶がうまく折り合いを付けられなくて、軽い離人感を覚えているのではないかと思う。
 赤色は命に係わる警告を示すことが多い。けれどその警告が実は何かのフィクションの設定であったかのような感覚に囚われて、本当に危険だったのか、妄想だったのかがわからなくなっている。炎って本当に熱いんだっけ、この血の量って致死量なんだっけ。赤信号のルールって本当はなんだっけ? 自分がいる世界のルールってなんだっけ?
 皆の今の名前と昔の名前がうまくかみ合わないのも、おうちの場所がわからなくなるのも、多分、どこまでが現実だったのかわからなくなっている。いつでもふんわり夢見心地。困る。

 そんな感じの離人感で向こう暫くは働くのも難しそうだし、過去も消え去ることはない。それだって生きていかなければならない。いずれは立ち直って皆達の力にならなければならない。いつまでもうじうじ考え続けている訳にはいかない。んだけど、自身の罪と現状について、考えれば考える程にうしは許されない気がしてくるだろう。
 以前だったら、うしは自暴自棄になっていたかもしれない。贖罪のためという名目で手頃な間違った道に堕ちていたと思う。けれど今は、そんなこと(とも、本当は呼べないんだけど)で命を放り投げたとして、じゃあ残る11人に悲しみと苦しみを押し付けるの? という問題がある。誠実であろうとすればするほど過去の罪過は首を締め上げて、今の宝物は諦める事を許さない。二進も三進も行かない状態。
 それでも、12人で生きていたいと今のうしならば思うのだろう。なんたって、牛が学園生活において「一人なら死んでいただろう」と思った理由は、身体の危機によるものではなく、「誰もいない所に一人でいたらいずれ気が狂ってしまうだろう」と想像したから。簡単ではない道のりも、12人なら超えていけるかもしれないと思ったから。
 そもそもうしは数値的にも精神が弱い! 薄弱! もし記憶の無いまま一人っきりで学園へ置き去りにされていたら、どんなに食料の貯蔵があろうが衛生的に問題がなかろうが精神が濁っていただろう。このまま出られなかったらどうしようとか、誰がなんのためにこんな事をしたんだろうとか、自分が何か悪い事をしたんだろうかとか。考えても仕方の無い事を考えて、その内勝手に弱って死んでいたんじゃなかろうか。
 それを理解しているからこそ、11人の仲間がそばにいてくれたから自分は生きていられたのだとうしは考えている。だからどんなに自身に罪があろうが、自ら無為に命を捨てる気はないだろう。むしろ、皆が無事に生きられるように頑張って自分の持っている力を使おうとするんじゃなかろうか。

 たとえば、うしは経理をほぼ持っていないものの法律を持っている。だからさまざまな事をやるための事務手続きには少し強いだろうし、11人の仲間、それ以前に11人の子供達である彼らを社会的に存続させるために色々調べるんじゃないだろうか。とくに保険回り……。医療費10割負担は本当にきついので……。それ以外にも取得しなければいけない法的なあれやこれやは沢山ありそうだから、働けずに家にいる間、うしは事務的な物事を処理するために尽力しているだろう。あれもこれも処理しなきゃ〜ってあっぷあっぷしてる時もありそう。
 療養のために家にいるんだからちゃんと休んで! という意見も出るかもしれないが、うしとしては、こうして調べものをして家事をしてと忙しくしている方が安心できるのだろう。時間があると先述したようないらないことばかり考えてしまうから。見ない方がいい考えから目を逸らすための生存戦略なんだな。
 それからもっと直接的な自己犠牲の話をするなら、今のうしは、もし自分が死ねばみんなが助かるのだと言われても、自分も死なないように問題を打開する手段を探すようにすると思う。これはみんなと学級裁判を生き延びたからこそ目指すようになったことで、かつての殺うしだったら成し得なかったことだろう。殺うしは、それこそ自暴自棄の塊のようなものだったから。


 じゃあ殺うしってなんなん。どんなだったん。という所は以降で書きながらまとめていきたい。ここの文を打っている時点では私にもわかってない。なんなんだ?


【罪状】
 まずは暗殺者及び教団関係者であるがゆえに犯していそうな罪状について考える。大まかに、以降の内容の罪は犯していそうか? というのは現状考えている。

・傷害
・殺人
・死体損壊
・詐欺
・窃盗
・違法取引

 詳細は以下の通り。

・傷害
 暗殺に伴い周囲の人間を痛めつけたことがありそう。時を巻き戻す能力を使って拷問なんかをしたこともあるんじゃないだろうか。うしの能力を使えば死んだ人間も生き返る。時間を巻き戻す前の記憶を残す事もできる。つまりは拷問対象の生命を確実に守った上で死の感覚を覚えさせる事ができるという事。死の恐怖を味わって尚正気でいる事は難しいだろう。

・殺人
 なんたって暗殺者。主に銀の黄昏教団内のいざこざだったり、敵対する教団の厄介者を始末していたのではないだろうか。不思議なことに対人戦の出目が異様に良いので、対戦闘要員用の暗殺者だった可能性もある。一方で、一般人を殺めた事は少ないと思われる。

・死体損壊
 暗殺対象の殺害後、どうせ殺すしかないのなら一番良い状態をこの場に固着させようと、死体を虫の標本のように飾り付けたことがあるかもしれない。「時を操る者の脅威が及んでいる事を示す為に」と教団から指定されて飾った可能性もあるが、詳しくは未定。

・詐欺
 アーティファクトのやり取りをするときに偽装表示的なことをしていたかもしれない。敵対教団に偽物を売りつける為に情報を改ざんしたり物品をすり替えたりなど。修繕技能があるのだから、アーティファクトの魔術的な要を的確に改造できただろう。医者は患者を生かす事も殺すこともできる、というのに近い話。
 とはいえうしにはクトゥルフ神話技能が無い以上、あまりたくさんの魔術的知識は無かった筈。そのためうまく改造できる事例だけだったとは限らないし、偽る気なく間違った情報を記載した事例もありうるだろう。

・窃盗
 アーティファクトを強奪するために暗殺の仕事をして、該当アーティファクトを盗み帰ったことがあるのではないか。お宝の匂いがプンプンするぞ~

・違法取引
 これは一般社会的な罪状になるのだけど、アーティファクトの中には植物の種とか動物由来の製品とか輸出入禁止になってるものも混じってそうだから、知らず知らずのうちに侵している可能性は高い。

 まとめてみると、暗殺者であるから犯した罪というよりは教団員であるから犯した罪の方が多いようにみえる。やはり、ザ・家庭の事情……なのかも。



【家庭の事情】
 前になんかまとめたきがするんだよな! とは思いつつ改めてまとめる。

▼出自
祖父:人 祖母:人 叔父:人
母:人 父:ヨグソトース、あるいはヨグソトースの子孫である男性
双子兄:混血 双子弟:混血(うし)

 うしの血筋は祖父母の段階から銀の黄昏教団(クトゥルフとかヨグとか、さまざまな神格を崇める教団)の傘下にあったのだろう。それより前の事は不明。支子の言葉遊びを残したいのと、ダニッチの怪に登場するヨグソトースの子は双子で産まれてきていたという所から、うしも双子の、それも弟側であるという事にしている。ヨグソトースとの血の交わりにより、兄はヨグソトース本来の能力に近い力を受け継ぎ、うしはタウィル・アト=ウムル寄りの、道具を介した力を受け継いだ。


▼能力
 うしの受け継いだ力は「着の身着のままでも時間転移を行える」能力ではなく、「アーティファクトと上手く影響しあって分岐点に移動する」能力。前者の能力は兄の方に与えられた。兄は門であり、うしは鍵。
 シナリオを壊さない程度に能力を調整すると、うしの能力は、数値化できるほどの魔力貯蔵も無い粗悪な魔道具でも、相性がよければちょっとだけ動かせるという程度のものだろう。例えば、一般にパワーストーンと言われて売られているさざれ石があるとする。その石には貯蔵MPとして表記される程の魔力も特別な能力もないが、うしが使うのであれば過去へ転移するためのアンカーにできる。アンカーは使い切りで、転移に成功した場合、生じた次元の歪みの代償になって壊れてしまう。といった具合か。恐らくは、後生大事にもっている懐中時計が一番相性のいいアーティファクトであり、時間転移の鍵でもあるのだろう。
 マーリン教団及び銀の黄昏教団に居た頃は、魔道具として売るには弱すぎるが捨てるには危険なアーティファクトをうしのアンカーに回す事で体よく処理していたのではなかろうか。シェアハウスに移行してからは、うし自身がリハビリと暇つぶしを兼ねて作っているつまみ細工がよくアンカーになっている。……つまり、あれは見る人がみたらアーティファクトなんじゃねぇの~!? しらんけど。暗黒の祖先持ちだし、先天的に魔道具制作技能0.001%くらい持ってたりしないか。しらんけど。


▼うまれてからのこと。
 受け継いだ力の判別がつくころ……大体1~2才の頃のこと?

 母は兄を銀の黄昏教団に残し、うしを教団分派のマーリン教団(カルト・ナゥ参照)である祖父母の元に預けた。銀の黄昏教団ではヨグソトースの力が、マーリン教団ではタウィルの力が重宝されたのだろう。マーリン教団は古美術屋のフリをした魔道具屋のようなものであり、祖父母は国内にて古物および魔道具の店を営んでいた。さらに祖父が教団用心棒みたいな感じで暗殺者に近い事をしていたため、道具を使うのが上手なうしを置いておけばさまざまな点で利益になるのだ。
 そうして分派に送り出されこそしたがうしは兄の補欠でもあるので、親権もろもろはそのまま母および銀の黄昏教団本部へ帰属する事になっていたのだろう。


▼じーばーそだちのあらまし
 預けられた祖父母の元でうしはだいじだいじにされていた。確かに暗殺業や教団による胡乱な儀式は常にそばにあっただろうが、それ以外は一般的なじーばー育ちと違わず。頑固で職人肌だがちょっとばかし孫ばかな祖父と、ほんにゃかした祖母とそれなりに平和に暮らしていた。何故ならそういうフラグを今まで散々ばらまいてきたため。食の好みが渋めだったり、おばあちゃん家みたいな料理作るって設定だったり、口調が時々おばあちゃんだったり……。懐中時計もじいちゃんから貰ったものだったりするのだろう。
 そうして暮らす中で、うしは祖父母の働きをみて古物商の仕事と教団としての活動を学んだ。うしは祖父母にとても懐いていたとおもうし、後継になることを決めて高校も技術系を選択する程、マーリン教団への帰属意識は強かった。今ではもう帰る事も叶わないが……。
 戦闘技術に関しても基本は祖父に教わったんだろう。というか、時間遡行の能力があるアーティファクトを使って祖父の仕事の手伝いをしていた事さえありうる。祖父も高齢なので上手く仕事をこなせない事もあっただろうし、がきんちょのうしを連れていたら尚更のこと。その不足をちょっとの時間遡行でがんばって補っていたのではなかろうか。

 そうしてお手伝いをしている内に、分派にいるうしもちゃんと能力が使えている事を、銀の黄昏教団の方に嗅ぎ付けられたのだろう。


▼お家騒動
 少し影を抱えながらも古物店で穏やかに過ごしていたうしだったが、高校1年の冬に祖父が他界する。祖母もそれより前に亡くなってるのではなかろうか。(おじいちゃんが亡くなったタイミングはうしが学校行ってる間、かつデイケアさんが来てくれるまでの間だった。なのでうしは以降「もし自分が近くにいたら祖父を救えてたのかもしれない」という思考に囚われ、大事な人から手を離しては行けない、というロジックからなる溺愛系の束縛系となる)
 うしとしては祖父の残した古物店の後を継ぎたかったが、祖父の死亡時点ではうしは未成年だったので、店舗の所有権は一度他の大人に一度譲り渡す必要があった。祖父はマーリン教団の友人に権利を継ぐ予定でいたのだが、叔父が圧力をかけて権利を奪取。結果、店舗の所有権は叔父および銀の黄昏教団へ移行。養育権も母に血の近い叔父と銀の黄昏教団へと移行する。教団はそれなりに能力を使えているうしを、銀の黄昏教団の研究……不死の追及の為の素材かつ暗殺者として教団へと引き戻そうとした。

 うしは銀の黄昏教団に興味はなく、マーリン教団の傘下に残る……というか、祖父母の古物店を引き継ぐ事を望んでいたから、所有権が教会に移った後も店の仕事を続けようとしていた。だが、元の状態でさえ店とマーリン教団の仕事と学業のそれぞれに割り振る時間のバランスを取るのは難しいのに、暗殺業務も割り振られる事になりうしのキャパシティは完全に崩壊した。それは宛ら、銀の黄昏教団以外の仕事を諦めろという圧力のようであった。

 取捨選択の末、うしは生存の為に暗殺業を、自身の希望と精神安定の為に古物店業務を行うようになる。学業は選択肢からあぶれ、結果として1ダブした。
 しかし、なんとか仕事をこなすともっと働けるだろうといわんばかりに教団の仕事が送られて来る。それに反抗するように商店の仕事に取り組めば当然時間が足りなくなって、睡眠不足や過労でへろへろになってストレスで自暴自棄になる。そんな荒れた状態だったのでこの時期は煙草の消費量も多かっただろうし、仕事でミスをする事も多かっただろう。失敗の度にうしは死の感覚を精神に刻まれ、命綱として装飾やピアスを増やされ、自暴自棄は加速した。
 負のループに呆れた教団がうしをゾディアックスクールに放り込まなければ、近いうちに仕事で失敗するか自死を選ぶかでこの世を去っていたんじゃないだろうか。



【学園生活】
 数多くのタスクに追われる中で、うしは学園生活を一番蔑ろにしていた。工業系の高校への進学は祖父母と相談して決めたことであり、ちゃんと卒業する事が進学を許してくれた祖父母への報いになるとは思っていた。しかしそれは店を守ること、生きることと比べたら優先度の低いことだった。
 そもそもうしは小さい頃から古道具屋の手伝いをしていたから、学校で学ばずとも古物修繕の基礎が身についていた。その上毎日仕事として家具修繕をしているのだから実技経験も当然申し分ない。学校で学ぶことといえば、伝統的なものとは違う一般的なやり方を学ぶことと、感覚的ではない理論的な知識の修得。あとは資格や肩書きを得る程度だったのではないか(尚、一般科目はこの限りではない)(EDUはふつうだから)(無振りの英語みて)。
 それらの知識や資格はあればあるだけ良いものではあるが、無くても店は回るし生命にかかわらない。だからうしは学園生活を一番に犠牲にした。むしろ学園で過ごすことをたまにする息抜きとか、気まぐれに行う『普通の人間』になるためのチューニング程度に考えていたかもしれない。なんてことはない人生がそこかしこにある中で過ごすのは、教団や店で過ごすよりはずっと気楽だったろう。適当に受け答えしても、何かを間違えても簡単には殺されない。それはまさしく平和だった。
 結果として、うしは殆ど学校には通っていなかったんじゃないだろうか。時々疲れた顔のまま登校してきて、怪我だらけでピアスもバチバチで煙草の匂いなんかも纏っているのに、そんな異常を悪びれることもなく呑気に過ごし、ダブって2週目に突入している実技と座学のテストの結果だけなんとか出してまた来なくなる。学校の人のうしに対する評価は、めちゃくちゃ嫌いとなんか気になると怖すぎる……で3つに分断してたんじゃないだろうか……。戦いは苛烈を極めていた……(いない)。

 多少自分が異質であれ、うし自身は平和を好んでいたし、意図的に破壊しようとは思っていなかった。けど、あんまり自分のいる教団の日常と学園の日常が違うから、つい教団のノリでドギツいことを言っては同級生をびびらせることはあったかもしれない。
 たとえば、ある時に校舎裏で暴行を受けている子を偶然見つけて、なんとなく不快だったから時を戻して救ってやったことがあったかも知れない。適当な処理だったからその子に記憶が残って、不思議な内緒を共有することになったかもしれない。でも、その過程で暴行を受けていた子が怪奇との出会いに運命を感じ胸を高鳴らせていたとしても、うしにとってそれは運命なんかじゃ無くて気まぐれな日常でしかない。だからもしその子から特別な感情を吐露されたりしたら、うしはそれを断る必要があった。
 その時には、手近にある割れ物をわざと落として砕く事を一度、二度と無為に時を戻して繰り返し「君を救ったことと、これを割らないこと。僕にとってそれは同じ」「目の前に落ちて来るものがあったから受け止めた。それだけ。運命なんかじゃない」と、取るに足らない気まぐれであったことを示して諦めさせたのではないか。
 また、その子に再び何かの問題が起きて時間を戻すことを求められても、うしはきっとそれに応じなかっただろう。「そんな事、起きるわけないでしょ。君はやり直しの効かない人間だ」と、簡単に梯子を外しただろう。そもそもうしには梯子をかけてやった気すらないのだから、外すと言うのさえおかしな話だ。……しかしこれらの表現をドストレートに行うと、大概の人は簡単に傷つくだろう。普段周りにいる人間は教団や暗殺に携わる人間ばかりだし、どちらかというとチクチク言葉の使い手だから、こんな表現はジャブ程度ものでしか無いはずだった。でも、刺され慣れてない人にとっては普通にめちゃくちゃ痛い言葉なのだ。
 うしも中学までは普通に学生をしてたのだから一般的な感覚はわかるはずだったのに、暗殺業に精神を追い立てられて、こんな簡単なこともわからなくなってしまっていた。その事に自分でもひどくショックを受けて矯正しようとしたのだろう。現在のうしの人となりはこうして培われた。うしは学園を蔑ろにしていたが、社会一般に属する人間としての真っ当な価値観をチューニングするためには必要な世界だったのだな。ある意味では、時々登校できていたからこそ、教団に染まり切ることなく健全な精神を残しておくことができたのだろう。

 気まぐれでありながら自暴自棄で、かつ取引に忠実であるというのはうしにとって結構重大なことで。学内で誰かに親切にしてもらったら、平和を乱すとか無茶な内容でなければ、求められるものを御礼として渡していたかもしれない。取引成立だね。
 この時に何を渡していたかは良くも悪くもさまざまだと思うので好きに味付けをしよう! 金銭は仕事以外では渡さない気もするけど、知識や欲望の相手やサクラとしての役目は引き受けたかもしれないし、もしかしたら御呪い用の血液なんかをせびられた事もあるかもしれない(気味は悪いけど秘密が割れる訳じゃないし、教団に所属してるわけでもない学生に魔術なんか使えないだろうから数適程度の血なら持ってってヨシ! って渡してそう)。同人誌の描きどころはここ!




【総合した性格や思考まとめ】
 うしは基本的にまったりのったりした平和主義的な性格で、かなりの物質主義者である。新しく何かを手に入れることより、所蔵しているものを存続させることに価値を見出す。古物店育ちなので物を大事にする概念が体に染み付いているのだろう。
 また、「自分が我慢すれば自分が好きな人たちは幸せになるよね」という思考をすることが多く、それは幸福な王子と言えば聞こえは良いけれど、どちらかというとカオナシに近い。金を差し出して従わせようとするんだ。いや、直接的にお金をあげたことはないだろうけど概念として……時は金なりともいいますし。
 実際の金銭の話をするなら、適正価格かつ正規ルート以外でのお金のやり取りは商人として許せないからあんまりしないと思う。仕事や依頼への報酬なら払うんだけど……お互いが仕事と割り切れない内容で金を使って従わせるのはちょっと違う。
 また、金銭以外のやりとりにおいても等価交換を重視するきらいがある。無性の愛の存在は理解しているものの、なんとなく落ち着かない。

 取引といえば、たぶんの話をすると、うしは自分の要素に価値があることはなんとなく意識している。逸れもの、怪しい先輩、不死の怪異……そんなものから与えられる共感や特別視(の素振り)は、退屈に日常を過ごす身にはどんなに楽しい非日常に見えるか、自分のキャラデザを理解している男だからわからないことはないだろう。うしは逆に退屈な日常が欲しい筈だから、本当の憶病な姿を隠して良いところだけ見せるようにして、お互いに都合の良い状況を得る為の取引をしていたのではないか。例えば学園の項目で書いた気まぐれな人助けとか、あとは店で働いている時でも、必ずしも教団の事を知っている人だけにアーティファクトを売っていたとは限らないだろう。もしかしたらよくある怪談のように、何もしらない人に怪しい怪異のフリをしてアーティファクトを売りつけたり、時間を戻して様子を見ていたりしたかもしれない。そうして人の人らしい感情の起伏に触れるのは先述の通りの人間的感覚を保持する為のチューニングになったのだろう。
 ざっくりいうと、みんな綺麗で不思議なものが好きでしょ? でも綺麗すぎると嘘っぽくて怖いでしょ? という所を程よく整えたのが今のうしの自己プロデュースという感じ。本編時空でも、神経質なところをなるべくお節介という要素へすり替えるようにして、私無害ですよ! でかいけど怖くない愉快なお兄さんですよ! と示すつもりでわちゃわちゃほにゃほにゃおっとりした言動を意図的に演じてた所があると思う。素の所も多々あるだろうけど、少しも偽っていないと言うと嘘になる程度には。

 逆にいえば、うしはそうして偽っている自分を暴かれるのがやや苦手。ぼんやりしてる、どんくさい、という評価は「そうあるべき」として表出させている要素だから言われても照れ笑い程度で済む。でも、嘘つき、どうして嘘つくの? と詰められたり、正直に話して? と言われると困ってしまう。どうしてわざわざ悪い部分を見せなきゃいけないのかわからないし、そんなもの知ってどうするの? と思ってる。興味本位で踏み荒らした挙句、助けてくれるわけでもないのに。と。絶妙に防御感強め。少女ふぜゐイメソンに背負ってるから…………
 でもゾスクの皆にはそれなりに中身を見せても良いと思っているので、つつきに来てくれるのは歓迎……! というか、信頼の証として聞かれたら少しずつ出すのが道理かなと考えていそう。しばらくの間はやっぱり不安になったりして、見せても良いと言ったりやっぱりだめだと隠したり落ち着きがないかもしれないけど……

 あと考えている事としては、うしは明確に、口唇期でなにかに躓いている。
 例えば、うしの生まれが教団で神の血を継ぐものである以上、実母だけに抱かれ育ったとは考えにくい。むしろ、乳児期の養育は専属の教団員に任せられ、実母とのコミュニケーションは碌に取っていない可能性さえある。兄の方が教団には重要だったのだから、わざわざ二人の子を同列に置いて育てるなんて事はしなかっただろう。
 乳児期の母子コミュニケーションの欠如は愛着障害の引き金になりうるとされている。口唇期のリビドーが満たされていないあたりが、めちゃくちゃな束縛癖や、爪噛みなどの根源的な原因なのではなかろうか。細かい要因をあげればストレスとかおじいちゃんの死とか色々あるのだろうけど……大元を辿るならそこにたどり着くんじゃないだろうか。
 執着を持った相手を他人へ渡そうとしないというのも、生育環境によるものかもしれない。大事なものだってちょっとしたきっかけで簡単に奪われてしまうから強く握り引き留めていなきゃならない。噛み付いたら離さないにゃ。畳む

クトゥルフ